専門医からのアドバイス 定期検診こそが安心への第一歩 乳がんの早期発見には、自己検診とともに定期検診の受診が大切です。定期検診に抵抗感を持ち受診したことがない人はもちろん、受けたことがある人にも定期的に受けてもらうため、専門医の先生に乳がん検診の重要性や、検診方法などについてお話をうかがいました。

稲田陽子 先生

中央通り乳腺検診クリニック 院長 稲田陽子 先生

<プロフィール>
平成10年広島大学卒業。
広島大学腫瘍外科、国立病院機構九州がんセンターを経て、平成20年に広島にて中央通り乳腺検診クリニックを開業。
検診マンモグラフィ読影認定医(AS判定)/日本外科学会認定医/日本乳癌学会認定医

マンモグラフィの痛みは人それぞれ。
痛みが気になる方は生理後に検査を。

基本的には、40歳以上の方にはマンモグラフィと視触診をセットで2年に一度、必ず受けていただくように勧めています。
マンモグラフィ検査は、痛いと感じる方とそうでない方がいらっしゃって、個人差が大きいです。圧迫が必要な検査なので、ある程度痛いのは仕方ないのですが、挟む圧力は上限が決められていて、それを超えて挟むことはありません。
また、痛みの強い方でも確認しながらゆっくり挟んでいき、我慢できるところでストップします。
生理前は乳房の張りが強いので、痛みが心配な方は、生理後に受けるとよいでしょう。

マンモグラフィと乳房エコー。
それぞれを補完するためにもできれば併用を。

検診の目的はがんで亡くなる方を減らすことですが、その効果が証明されているのはマンモグラフィだけです。近年、40代の日本人女性を対象にした大規模な試験が行われ、マンモグラフィにエコーを併用すると発見率が向上することが分かりました。
検診を行う私たちとしては、乳がんを発見しやすくなるため両方受けることをお勧めしたいところです。
検査を併用するマイナス面としては、受診される方の経済的、時間的負担が増えること、本来なら異常ではない良性のしこりも多く見つかることで精密検査になる確率が増えてしまう欠点があります。エコーのみの検診の有効性は分かっていません。

より早い段階で発見するには定期検診が重要。
乳房の健康にもっと関心を持って欲しい。

乳がん検診は一度受けて大丈夫でも、1年後、2年後に新しくしこりができることもあります。だからこそ、定期的に検診を受けることが重要です。
乳がんは誰でもなり得る病気で、かかる確率が高いことを知っていただきたいですね。
乳房は、他の内臓と違って自分の目の前にあり、見て触れる臓器ですので、まずは関心を持ってもらえたらなと思います。

検診の種類

視触診

視診では乳房のへこみやひきつれ、ただれなどがないかをチェックします。触診では乳房全体を触ってしこりがないかと、乳頭をつまんで分泌物がないかを確認します。さらに、腋の下と鎖骨の周りにリンパ節の腫れがないかを調べていきます。

マンモグラフィ

乳房専用のX線装置を使って検査します。乳房をプラスチックの板で圧迫し、できるだけ薄く広げて撮影します。
一般的な住民検診では、40代の場合は斜め方向と上下方向の2方向、50歳以上は斜め方向からの1方向です。
斜め方向からの角度が、乳房全体がよく見える撮影方法です。放射線被曝があるため、妊娠をしている方は受診できません。また、豊胸手術でバッグを入れていたり、ペースメーカー、水頭症のシャントチューブなどが入っている方も受けられません。

乳房エコー

乳房にゼリーを塗って、超音波を出す器具(プローブ)を乳房の上にすべらせながら乳房の中を診ていく検査です。痛みは伴いません。妊娠中も受けられるほか、授乳中や乳腺の量が多い若い方ほど乳房エコーが役立ちます。

年代別に推奨する検診方法

20代 自己検診+乳房エコー★
★ご家族に乳がんの方が多い、良性のしこりがよくできるなど気になることがある方は受診をおすすめします。
30代 自己検診+乳房エコー★
★ご家族に乳がんの方が多い、良性のしこりがよくできるなど気になることがある方は受診をおすすめします。
30代は乳房エコー中心で良いのですが、今までしこりを指摘されたことがある方やご家族に乳がんの方がおられる方は、40歳より前に一度はマンモグラフィを受けることをおすすめします。
40代以上 自己検診+マンモグラフィ
★40代以上の方は2年に1度はマンモグラフィを受診しましょう。
機会があればエコー検診も併せて受けることをおすすめします。